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浪華悲歌 [映画のこと]

山田五十鈴が、自分の人生を決めた作品、と言っていたのが、
この「浪華悲歌(なにわえれじー)」と、「祇園の姉妹(ぎおんのきょうだい)」
なのだとか。
先日、「祇園の姉妹」を観て、こちらも観たくなった。
両作品とも、監督・溝口健二、脚本・依田義賢。

女学校を卒業し、電話交換手として働くアヤ子(山田五十鈴)は、
父親が職場の金を横領してしまったことから、
自分が勤める会社の社長(志賀廼家弁慶)の愛人になる。
その後、兄が大学の学費に困っていると聞き、
やはり放っておけなくて・・

という、新藤兼人監督いわく、「敗れた女が主人公」の物語だ。

多分、こうはならない。
今なら他にも方法が考えられるし、おそらくアヤ子と同じ道は
辿らないで済む気がする。
でも、それならリアリティはないはずだが・・わかる。
彼女の気持ちが、手にとるように伝わってくる。
ずしんと来るのは、90%くらいはこうならないけど、
残りの10%、絶対ならないと言い切れない、
わずかな隙間にぎゅっと詰まったリアル、なのかもしれない。

不良少女って言葉が、何時からあるのかわからないが、
この時代にはすでにあったようで、ちょっとびっくりであった。
「どこまで悪くなるかわからない」
というセリフは、ほんとうに切羽詰まった感があった。

好きな男が、自分だけなんとか救われようと言い訳を続けている。
それを聞いているアヤ子の表情が、悲しすぎて痛かった。
(1936年、日本、71分)





ブライド [映画のこと]

大好きな「フランケンシュタインの花嫁」のリメイク(らしい)。
でも、観る前にあらすじを読んでみたら・・あれ??

『人造人間ビクターの為に、女性の人造人間イーバを造り出したフランケンシュタイン博士。
イーバの美しさに魅了された博士は、彼女に礼儀作法を教え、パーティに連れて行く。
一方、博士にイーバを取り上げられたビクターは、小人リナルドと共に旅に出る』
映画.comより)

オリジナルと同じなのは、最初の1行だけ。
フランケンシュタイン博士は、死体をつないで「怪物」を創ったことを、
とても後悔していたが、プレトリアス博士にそそのかされて、
怪物の花嫁をつくることになる・・・という内容のはず。

やっぱり、見事なまでのB級感。
B級の良さが詰まった作品(笑)、とでも言うべきか。
画が案外きれいで、美術も丁寧な印象。

死んでいたとはとても思えない、
健康そうなイーバ(ジェニファー・ビールス)。
ありえないスピードで知識と教養を身につけ、恋もするようになる。

博士の屋敷から逃げ出した怪物(クランシー・ブラウン)は、
子どもにいじめられていたリナルドを助け、ビクターという名前をつけてもらう。
彼は体が大きいだけで、それほど怖くない。
なので、リナルドとサーカスで職を得ることもできて、
ふたりで夢を語り合ったりする。

対するフランケンシュタイン博士(スティング)が、顔色悪くて。
古いお屋敷に住んで、色白で神経質っぽいし、ドラキュラみたいだ。

そして、傲慢で嫉妬深い。
イーバをかばって、彼女の外出を隠したメイドを即クビにしたり、
本の著者の間違いを指摘されたら、
その本を暖炉に捨てて証拠隠滅しちゃう。

なんじゃこりゃ、ってつっこみながら観ると楽しめる(笑)。
でも、不思議と腹立たしい気持ちにならないのは、
「サンキュー」をていねいに言う、ビクターのキャラクターのせいかも。
(1985年、アメリカ、119分)


ブライド [DVD]

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わが母の記 [映画のこと]

原作は、井上靖の自叙伝的小説
わが母の記、というより、わが家族の記、だなあと思った。

日本の古き(そんなに古くないけど)良き時代の、小説家の家族。
認知症のおばあちゃんを、押しつけあったりせず、
家族みんなでちゃんと看るという。

時々愚痴を言ったり、おばあちゃんの言動に、つい怒ったりする
ところがリアルで良かったかな。

観る前は、主人公の伊上洪作(役所広司)と、
母・八重(樹木希林)との間に、とても深い溝があり、
相当ぎこちなく接しているのかと思っていた。

でも実際は「兄弟の中で、自分だけが捨てられた」という
思いは常にあるものの、案外普通の母と息子で、
兄弟仲もいいし、娘たちはいい子で、
なんていうか、ほんといい家族で。

言いたいことをいう(言われても言い返す)
八重のキャラクターは、かわいらしい。
親は年をとると小さくなっていくが、八重も年を追うごとに、
だんだんと本当に小さくなっていくように見えた。
やっぱりそれは、樹木希林の演技力なのかな。

伊上の娘たち(ミムラ、菊池亜希子、宮﨑あおい)が
ほんとの姉妹のようで、トランプしたり、ふざけあったり
している様子が、とてもリアル。

そう、派手な演出をあえて避けたのかもしれないが、
大袈裟にお涙ちょうだいにしたくなかったのかもしれないが、
全般的にリアル過ぎたかも、と思う。
淡々と時間が流れるので、ちょっと長く感じた。

伊豆と軽井沢の風景はとても美しくて、こういう所で
温かい家族と晩年を過ごせた八重さんは幸せだっただろうな。
(2012年、日本、118分)





ハーヴィー・クランペット [映画のこと]

「メアリー&マックス」のアダム・エリオット監督作。
それ以前に、この「ハーヴィー・クランペット」で
第76回アカデミー賞短編アニメ作品賞を受賞していたそう。

「メアリー&マックス」同様、とてもつらい内容。
主人公のハーヴィーに悲愴感はないのだ。
彼は、自分を不幸だなんて思っていないから。
でも観ている側は、やっぱりつらい。こちらも子ども向けではないなあ。

映画の中に、ハーヴィーなりの「事実」がたくさん出てくる。
彼の解釈なので、事実でないことも含まれているようだけれど、
「ひとが一生に使うデンタルフロスの長さは平均30キロ」
というのは、本当らしい。

セリフはほとんどなく、ナレーションをジェフリー・ラッシュが担当。
(すごい余談ですが、先日「英国王のスピーチ」、観たばかりなので
 ちょっと「おー!」でした)

とても短いけれど、ハーヴィーの生涯を描いているせいか、
ちゃんと映画を観た、という満足感が得られる。

しあわせに満ち溢れた人生ではなかった。
けれど、救いがないわけではなくて、ただ悲しく終わってしまうわけでもない。
私は、この監督のラストシーンの描き方、すごく好きだ。

DVDには、さらに短編の「叔父さん」(処女作)、「いとこ」、「兄さん」
(3作合わせて24分)も収録されている。

合わせて観ると、最初から思いが一貫しているのがわかる。
コメンタリーも、製作時の苦労や楽しさが伝わって、おもしろい。
くまぬいぐるみの毛を緑に染めて、芝生作ったとか・・)
次の作品は、映画館で観たいと思う。
(2003年、オーストラリア、22分)


ハーヴィー・クランペット [DVD]

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アーティスト [映画のこと]

観終えて、映画館を出て、歩いているうちに泣けてきた。
正直、内容に、というより、作り手の「映画が大好き!」っていう思いに
やられてしまった気がする。

ジャックラッセルテリアの「アギー」は、文句なしのパルムドッグ賞。
伏せ、の変形型の、ごめんなさいみたいなポーズがかわいすぎる。
わんこが一所懸命走る姿に、私はとても弱い。
別に何か使命をもって走ってる訳じゃなくても、ハンカチ必要(笑)。

映画がサイレントから、トーキーの時代になって、
スターだったジョージ(ジャン・デュジャルダン)は、階段を下りていき、
新人のペピー(ベレニス・ベジョ)は、上っていく。
というシーンが実際にあったが、他にもけっこう階段が出てきたように思う。
階段好きなのかな。

主人公のジョージの風貌は、本物の古い映画スターみたい。
ひとの良さそうな笑顔も良かった。
ペピーは、生き生きした表情と、乱暴な(?)投げキスがとても魅力的で。
「ベイプ」のお父さん、運転手役のジェームズ・クロムウェルは、
ずいぶん長い間、あの風貌な気がするけど、全然老けてない?

観ていて、「初心」という言葉が浮かんだ。
自分の環境がどれだけ変わっても、「思い」のはじまりを忘れない。
その、当たり前のようでいて、なかなか持ち続けられないシンプルな気持ち。

映画のフィルムを抱えるジョージ。
スターのジョージも、そうでないジョージのことも、変わらず見つめ続けるペピー。
ストレートで、見ていて気持ちがいいのだった。

音楽も、古い作品を意識していると思わせるものが多く、楽しめた。
この絶妙な音楽が、言葉の役割を十分果たしているよなあと、改めて思う。
サイレントは、やっぱりずっと、作り続けてほしい。
(2011年、フランス、100分)


アーティスト オリジナル・サウンドトラック

アーティスト オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ,デューク・エリントン,ブリュッセル・ジャズ・オーケストラ,ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団,レッド・ニコルズ&ヒズ・ファイヴ・ペニーズ
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2012/04/11
  • メディア: CD



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